珍しく、久しぶりに、教科内容の話題です。ホントはこんなことではいけないのですが。
アルミニウムとか亜鉛、すず、鉛といった金属は酸ともアルカリとも反応する性質がありまして、これらを両性元素といいます。このムツカシイ話は小6の理科に出てくるのですが、中学理科では正面切って取り上げず、高校化学でまた出てきます。
たとえば、両性元素であるアルミニウムは酸性の水溶液にもアルカリ性の水溶液にも溶けます。酸性の水溶液の代表はうすい塩酸、アルカリ性の水溶液の代表は水酸化ナトリウム水溶液で、それぞれ化学反応式は次のようになります。
2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2
(アルミニウム+塩化水素→塩化アルミニウム+水素)
2Al + 2NaOH + 2H2O → 2NaAlO2 + 3H2 …★
(アルミニウム+水酸化ナトリウム+水→アルミン酸ナトリウム+水素)
さて、この間たまたま小6理科のある教科書を見ていたら、アルミニウムをアンモニア水に溶かすという実験が出ていました。エッ、溶けるのか?(たしかにアンモニア水はアルカリ性ですが)と結果を見てみると「溶ける」とあり、証拠写真までついています。ただし、アルミ箔の小片が全部溶けるまで1週間もかかり、また、ただ溶けただけではなく白色の沈殿が生じています。
これはいったいどんな反応だ?こんな大変そうなのを小学校でやってるのか?と気になり、いろいろ調べてみましたが、高校化学の本などにはこの反応は載っていません。ネットでちょっと調べてみても、見られる範囲にはズバリの解答は見あたりません。もちろん自力で考えるには、私の能力を超えています(笑)
そこで、私が絶大な信頼を寄せている「新理科教育ML」に質問の投稿をしてみたら、わかりました。まず、反応式はこうです。
2Al + 6H2O → 2Al(OH)3 + 3H2
(アルミニウム+水→水酸化アルミニウム+水素)
白色の沈殿の正体は水酸化アルミニウム。なんとなく “アルミン酸アンモニウム” NH4AlO2? みたいな物質ができるようなことを想像してうんうん唸っていた私は、あまりのシンプルさにのけぞりました。どうもアンモニアはアルミニウムと水との反応を促進しているだけで、アンモニア自身は反応に参加していません。こういうのを触媒といいます。
ですから、「溶ける」とは言っても、アルミニウムが水酸化ナトリウム水溶液に「溶ける」反応(前出の★)とは意味が違います。こちらは水酸化ナトリウムも反応に参加していますからね。
また、★とちがい、反応に1週間もかかるというのが小学生には適切と思えない、という声もありました。なんでわざわざそんな変わった反応をさせるのかという。道理で高校化学の本には出ていないわけです。
ちなみに、両性元素の仲間の亜鉛はアンモニア水に溶けないという実験結果があります。ということは、いろんな本に「両性元素は酸にも塩基にも溶ける」とズバッと書いてあるのは正確ではない、ということになります。
ちょっと気になったことを調べてみると、思いがけず勉強になることがあるものです。