本の紹介です。著者は『新しい科学の教科書』執筆代表の左巻健男氏(同志社女子大学教授)。(ディスカヴァー携書、本体1000円)
書名はもちろん『水は答を知っている』を笑い飛ばすもの。カバー折り返しにあるキャッチをそのまま引用させていただきます。
波動水、
磁化水、
マイナスイオン水、
π(パイ)ウォーター、
トルマリンを使った水、
クラスターの小さな水、
抗酸化性をうたう水……
世にあふれる“怪しい水ビジネス”を科学の視点で徹底検証!
今日、amazon.com に次のようなレビューを書いて出しましたので、ここでも紹介しておきます。(掲載されるかどうかは4~5日たたないとわかりません)
=====ここから=====
「水に“ありがとう”と言うと美しい結晶ができる」?…馬鹿馬鹿しい。あり得ない。水は人間の言葉を理解したりはしない。多くの人はそう考えるはず。--にもかかわらず少なからぬ大人が騙されてしまうのは、ニセ科学は科学的な用語や雰囲気に粉飾されていて、<科学の理解は浅いが科学的な雰囲気には弱い人>の心理を効果的に突いてくるからだ。
たとえば「波動」という言葉。ニセ科学でいう「波動」はもともと霊能者用語で、「あらゆるものが放射しているとされる何物かであり、霊気のようなもの」。物理学の「波動」とは全く異なるものだが、このような一見“科学的”な用語が散りばめられていると科学に見えてしまうのだ。
科学の常識を活用する能力を「科学リテラシー」というが、ここでは「ニセ科学を見抜く力」と言ってもいい。ニセ科学に騙されて財産や時間や健康を失うのを防ぐには、子どものうちから科学リテラシーを養っておく必要があるだろう。もちろん、大人になってからでも遅くない。怪しい本が売れている一方、科学者の側からの検証や批判はこれまであまりされてこなかった。本書をさきがけに類書が続々と登場するのを期待したい。
なお、ニセ科学に共通するキーワードは「波動」のほか「共鳴」「クラスター」「マイナスイオン」「エネルギー」「活性」「トルマリン」などなど。これらの言葉が出てきたら、それはたぶんインチキである。本書はこの点を明解にしてくれているだけでも一読の価値がある。
『水はなんにも知らないよ』