この間の中3の冬期講習で2020年春の入試問題をやっていて,コレハ傑作ダ!と感銘を受けた問題があります。千葉県の公立高校入試の国語です。鮮度が落ちないうちに紹介したいので今日この場で。
次の文章は、中学生の佐藤さんが、放課後に先輩の髙橋さんの家で、宿題のアドバイスをしてもらっている場面の会話です。これを読んで、あとの問いに答えなさい。
佐藤さん 先輩、この問題の答えは「ア」でいいですか。
高橋さん ちょっと見せてください。違いますね。
佐藤さん それでは「イ」でしょうか。正解は何ですか。
高橋さん 記号だけわかっても理解したことにならないでしょう。
佐藤さん 明日の授業で私が答えることになっているので、間違えたくないのです。
高橋さん 私の好きな言葉に、「魚を与えれば一日は食べられる。魚の捕り方を教えれば一生食べていける。」があります。( )ではだめということです。
佐藤さん わかりました。どのように解くのかを教えてください。
高橋さん ちょっと待って。この問題を解くにはまず、前提としてその前の問いがわかっていることが必要なのだけれど…。こちらも間違っているみたいですね。
佐藤さん そこは私が答える問題ではないのですが…。
高橋さん だめですよ。しっかりできるようになるこつは、基礎をおろそかに①しまぜん。②「木の長さを求むる者は、必ず其の根本を固くす。」というでしょう。
佐藤さん なるほど。私もできれば基礎から知りたいです。
高橋さん その姿勢は大事ですね。では、ここまで終わらせたらお茶にしましょう。お気に入りのケーキもあるのよ。
佐藤さん 先輩のお気に入りのケーキを③食べられるとはうれしいです。頑張ります。
(1) 文章中の( )に入る言葉として最も適切なものを次から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 苦しまぎれ イ その場しのぎ ウ 安うけあい エ なりゆきまかせ
(2) 文章中の①「しません」をその前の「しっかりできるようになるこつは」との関係が適切になるように書き改めなさい。
(3) 文章中に②「木の長さを求むる者は、必ず其の根本を固くす。」とありますが、こう読めるように、「求木之長者、必固其根本。」に返り点を打ちなさい。
(4) 文章中の③「食べられるとは」を謙譲語を用いた表現に直し、一文節で書きなさい。
解答 (1) イ (2) (例) しないことです (3) 求二 木 之 長一 者、必 固二 其 根 本一。 (4) いただけるとは
(ここに表示する都合で設問の表記を一部改めたところがあります。赤字は神谷です)
これを作問した先生は,この佐藤さんみたいな生徒さんに苦労させられているのだろうな…と想像が膨らんでしまいます。(1)の選択肢も奮っています。
高橋さんは聡明で教養があり優しくて教え方もうまい。こういう人に将来は教師になってほしいものです。佐藤さんはせっかく高橋さんと親しいのだから,「勉強のしかた」をよく教わるといいでしょうね。