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左手で押さえなさい

右利きの人が文字を書くとき、左手は紙やノートを押さえているものだと思います。紙やノートを固定するためにもそうすべきだし、自然と身体は前傾し、集中しやすくもなる。『ドラゴン桜』にも、確か最近そんなことが書いてありました。また、そのほうが見た目にも美しいものです。
小中学生を見ていると、左手が机の上に出ていない子が少なくありません。左手で押さえていないものだから紙がぐらぐら動いて書きづらく--習慣化していると書きづらくも感じないのでしょうが--しっかりした字は書けない。ぐちゃぐちゃの、筆圧も弱い、見ていられない文字になりがちですし、じっさい、「読めないよ」と言って書き直させることもしばしば。左手(左腕)はだらんと下がって腿の上になんとなく載っていたりしますから、身体が全体に左下がりに傾き、姿勢もよくありません。姿勢が悪ければ集中もできていない。


習慣化していると、二、三度注意されたくらいでは直りませんから、見かけたらその都度注意することにしています。「左手で押さえな」と言うだけでしばらく“もつ”子もいますが、だらんと垂れ下がっている左腕をつついてやったり、「よいしょっ」と持ち上げて机の上に置いてやるとか、もういろんな手を使います。
私が中学生か高校生のころ、別の生徒が「左手はどこをいじっとるんや」と言われていたのを思い出します。これは下品だと思うので、さすがの私もこれは生徒に言えませんが、つい言いたくなりますね。言いたくてウズウズします(笑)。
家庭や学校では注意されないのかな。学校ではしないでしょうね。それどころではなさそうです。
家庭では、食事のときがチャンスだと思います。食器に左手を添えるのが日本では自然でしょう。でないと、美しくない。うちの息子たちには、食べる様子が見苦しいと
「将来な、女の子とゴハンを食べに行ってそれやってると、振られるぞ。見苦しいから」
と真顔で(笑)言います。妻も
「そうだよ。あなたとはもう一緒にお食事したくありません、って言って、女の子、帰っちゃうんだよ」
と同調(笑)。
それはさておき、作法を教えるのは家庭の役目です。ついでに「勉強するときも同じだよ」と言ってあげるのです。
今年の夏休みに家族で定山渓温泉に一泊したとき、夕食で隣のテーブルにいたのが左手を使わない一家でした。そこは3世代で来ているのですが、おじいちゃんの左手がテーブルの下。年輩の人には珍しいと思い、それとなく観察すると、その娘らしき女性も同様。したがって6歳くらいの子どももまた同様。きちんと左手を添えて食べているのはおばあちゃんだけです。おばあちゃんは、自分の夫とか娘とか孫が作法がなってないのは平気なのでしょうか。横で見ている赤の他人が、気になって食事に集中できないでいるというのに(笑)。
子どものしつけがうまくいってないのは、かなりの割合で親がそうしているからなのかも知れないなあ、とそのとき思いました。食事の作法が勉強の作法にも通じ、子どもの集中力や、ひいては学力にも多分に影響するとすれば、家庭でのしつけは重要であります。気をつけましょう。

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