数学の「記述式」の3つめは平面図形の合同または相似の証明。2019年入試では大問4の問2です。問題はこちらをご覧になってください。正答例はこうなっています。
(正答例)
△ABFと△ADEにおいて, ★1
仮定より,AB=AD ……① ★2
①より,△ABDは二等辺三角形なので, ★3
∠ABF=∠ADE ……②
また,∠AGB=∠GAD=90°であり, ★4
∠BAF=90°-∠EAF,∠DAE=90°-∠EAF ……③
よって,∠BAF=∠DAE ……④
①,②,④より,一組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいので, ★5
△ABF≡△ADE
配点は(相場としては多めの)5点。②,③,④が導かれていれば中間点各1点となっています。最後まで書けば5点取れます。
まず,2つの三角形を“宣言”(★1)。この行は書かなくても構いませんが,書いておいたほうが仕事がしやすいでしょう。対応する三角形の頂点が順に示されているので,これをなぞれば対応する角や辺が確認できるからです。たとえば本問では∠BAFに対応する(等しい)角は,頂点の対応から自動的に∠DAEとなります。
合同条件の1つめは問題文に書かれていることですので,ただ「AB=AD」と書くだけでも良いですが,「仮定より」と断っておくと収まりが良いでしょう(★2)。一方,①から②を導くときは二等辺三角形の性質(定理)を使っているので,「仮定より」ではなく,根拠を示す必要があります(★3)。「二等辺三角形の底角は等しいので」のほうが良いかも。
★4については,正答例ではサラッと済ませていますが,大問の仮定であるAD∥BC(錯角が等しいこと)と問2の仮定であるAG⊥BC,そして大問2行目の仮定である∠BAE=90°を使っていますので,後に示すようにきちんと書くべきでしょう。③と④はまとめて「∠BAF=90°-∠EAF=∠DAE」としてもよろしい。
使用した合同条件(★5)は,①②④を示してさえあれば十分ですので,書かなくても構いませんが,書くのであれば間違えないように。
以上のように手を入れ,適度に簡略化しますと,正答例は次のようになります。
△ABFと△ADEにおいて,
仮定より,AB=AD ……①
二等辺三角形の底角は等しいので,∠ABF=∠ADE ……②
AG⊥BC,AD∥BCより,∠AGB=∠GAD=90°
また仮定より,∠BAE=90°
よって,∠BAF=90°-∠EAF=∠DAE ……③
①,②,③より,△ABF≡△ADE
最初の条件2つはたいてい易しく,これを書いておくだけで中間点1~2点となるので,最後まで書けないからといって空欄にしておく手はありません。わかったところまで書いておきましょう。関数の問3と同様,地道に稼ぐべきです。そして,合同条件の3つめが導けないときは,潔くそこでやめて,次の問題に行きましょう。
やってはいけないのが,以下に説明する“キセル答案”です。
(キセル答案の例)
△ABFと△ADEにおいて,
仮定より,AB=AD ……①
二等辺三角形の底角は等しいので,∠ABF=∠ADE ……②
また, ********** ∠BAF=∠DAE ……③
①,②,③より,一組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいので,
△ABF≡△ADE
**********の部分にあるべき根拠が欠落しているので,②までが中間点の対象となり,本問では1点となります。
条件の3つめが「∠BAF=∠DAE」だということは見当がつくのだけれど導き方がわからない,というとき,上のように根拠なく「∠BAF=∠DAE」だけ書いても得点になりません。続けて「使用するはずの」合同条件と結論を書いてもやはり得点になりません。英作文で単語や熟語が出てこなくてそこだけ日本語を書いても見てもらえないのと似ていて,それを書いても報われないのです。
あるいは,苦し紛れに**********の部分に意味の通らないことを書いても,採点者の心証を悪くするだけです。自分でも納得が行かないことを他人がわかるはずがありませんね。それを書いている時間に他の問題に行くとか,解けたはずの問題の見直しをしたほうがよほど実りがあります。たとえば(本問は違いますが)合同の証明が問1,その合同を使う角度の問題が問2であったとして,問1が書けていなくとも問2を正解できる場合が多々あるのです。
北海道公立高受験作法(3) 数学の「記述式」 その3