(2019.4.26記)
英語リスニング対策として「リスニング」の練習をするのはうまくない,という件です。では何をすべきかというと,単語・熟語と文法。なーんだと思われるかも知れませんが,これより重要なものはありません。
英語であろうと何語であろうと,知らない言葉は聴き取れません。フランス語やロシア語のリスニング試験であれば,私の場合これらをほぼ全く知りませんので,どんなに手加減があっても0点のはず(そもそも試験を受けることが間違い)です。
リスニング試験にも高校入試なりの手加減があり,声優たちの音声は概して聴き取りやすく,本物の会話みたいに速くて全然ついていけない,ということはないようになっています。だから,これで聴き取れない(ついていけない)のだとしたら,耳の分解能が悪いのではなくて言葉そのものがわからないからです。
それはまず単語・熟語のレベルであり得ます。apple(アポー)とかbanana(バナーナ)は多くの子が大丈夫でしょうが,avocado(アヴァカードゥ)はどうでしょうか。アボカドという果実を知ってはいても,アヴァカードゥと発音されれば怪しい。まして果実の存在を知らなければ無理。これはやや意地悪な例としても,知らない単語は聴き取れないのです。しかし逆を言えば,単語や熟語を知ってさえいればこの点は解決します。
いっぽう,文法がわからないから聴けないのだとしたら根が深い。 He stayed there for a week. という台詞があったとします。「彼はそこにどのくらいの期間滞在したか」という問いに日本語で答えるとしたら正解は「1週間」ですが,「4週間」と誤答する子が必ずいるでしょう。ヒー・ステイドゥ・ゼア・フォラウィークと発音されるので,最後の部分を four week と誤解するのです。(「4週間」ならその部分は for four weeks となります)
期間を表す語句の前に前置詞 for が来ることを知っていれば, for の次に来る部分が期間の長さだとわかります。ところが前置詞の存在を関知しなければフォラと言われて four だと錯覚するのも無理はありません。まして「4週間なら four weeks と最後が複数形になる」ことにも思い及ばないでしょう。アボカドの件と違い,これは別に意地悪問題でも何でもないのですが。
外国語に熟達している多くの先人が言っているように(たとえば千野栄一『外国語上達法』岩波新書p.41),外国語の学習とは語彙と文法に尽きるのです。リスニング問題で得点できるようになるためには,教科書に出てきた単語・熟語をまずマスターし,文法を総復習する。するとまずリスニング以外の問題で正答が増えるでしょうし,気がついたらリスニングも苦手ではなくなっている。そんな展開になることを期待したいものです。
英語リスニングをどうするか(2)