(2018年9月18日発行の『神谷塾だより』に掲載したものに加筆しました)
演奏の模様はたとえばこちらに。
プラターズを知らなくても曲名を知らなくても、この佳品を耳にしたことはあるだろう。邦題「煙が目にしみる」は1933年、アメリカの作曲家J. D. カーンによりミュージカルのために書かれ(作詞はO. ハルバック)、46年にナット=キング=コールが、58年にはプラターズがカヴァーしてヒット。ジャズのスタンダードでもある。
プラターズは1953年結成のアメリカのコーラスグループ。55年に「オンリー・ユー」(これも皆知っているだろう)が大ヒットした。幾度もメンバーチェンジと分裂を繰り返したが現在も活動中であるようだ。「オンリー・ユー」や「煙が目にしみる」のころのメインヴォーカルはトニー=ウィリアムズという男性(写真では後列左側、92年死去)。
They asked me how I knew my true love was true
Oh, I of course replied something here inside cannot be denied
皆が訊いた 僕の恋が本物だと どうしてわかるんだって
もちろんこう答えた この心の内にあるものは誰にも否定できないよ
They said someday you’ll find all who love are blind
Oh, when your heart’s on fire
you must realize smoke gets in your eyes
皆が言った いつかわかるだろう 恋するやつは皆盲目だと
心が燃え上がっていると 煙で目が見えなくなるのさ 理解しなよ
So I chaffed them and I gaily laughed
to think they could doubt my love ①
Yet today my love has flown away ②
I am without my love
だから皆をからかい 陽気に笑い飛ばしてやった
僕の恋を疑うなんてと
だが今日 僕の恋は飛び去ってしまった
僕は恋を失くした
Now laughing friends deride tears I can not hide
Oh, so I smile and say
when a lovely flame dies, smoke gets in your eyes
皆が笑って馬鹿にする 僕が涙を隠せずにいるのを
それで僕は 微笑んでこう言う
美しい炎が消えるときは 煙が目にしみるんだよ
① to think は不定詞で前の行の laughed の理由を示すのだと思われる。
「彼らが僕の恋心を疑っているだろうと思って」笑い飛ばした。
② yet は接続詞で「けれども、それにもかかわらず」。
ところで、smoke gets in your eyes が二通りの意味で用いられているのがわかるだろうか。最初は「心が燃え上がるときの煙で目が曇り、現実が見えなくなっているぞ」と仲間に冷やかされているのだが、二度目はそのフレーズをそのまま使い「炎が消えるときの煙が目にしみて涙が出るんだよ」と返しているのである。歌の主人公は辛いときにも機知とユーモアを忘れない。やるではないか。