(2018年5月9日発行の『神谷塾だより』に掲載したものに加筆しました)
ビージーズはイギリスの男性ヴォーカルグループ。デビューは1963年で、当時の後援者2人のイニシァルが共にB.G. だったのでグループ名が Bee Gees となったのだそうだ。最大5人編成の時期もあったが、紆余曲折があってバリー=ギブ、ロビン=ギブ、モーリス=ギブの3兄弟によるトリオ編成となった。現在はバリー以外は死去していて活動していない。
「メロディ=フェア」は’69年の作品。語句や構文は平易でテンポもスローだから、憶えやすく歌いやすい。日本では映画『小さな恋のメロディ』(原題Melody、’71年)の主題歌として非常に有名で、歌詞の意味を取ろうとするとどうしても映画のヒロイン(彼女の名もメロディという)がオーバーラップしてしまう。曲の発表のほうが先なのだが、まるで映画のために書き下ろしたような見事なはまり具合である。
ひとまず映画から離れると、「人生の現実というものがだんだんわかってきてしまって辛い気持ちを抱えている少女への励ましの歌」である。歌の少女を映画のヒロインに置き換えてもこれは成り立つ。
さて、fairには[公正な」「合理的な」「天気のよい」などなど多くの(概してポジティヴな)意味があるが、ここでの意味は原義でもある「美しい」とするのが自然だ。そして Melody Fair は「美しい(素敵な)メロディ」という意味になるであろう。形容詞が後置されているのがやや不思議だが、God Almighty(全能の神)のような慣用句もあるので、Melody Fairでひとまとまりの名と考えるのが良さそうだ。サビの部分でyour hairと韻を踏んでいるという見方もできる。
Who is the girl with the crying face
looking at millions of signs? ①
She knows that life is a running race
Her face shouldn’t show any lines ②
泣き顔の女の子は誰? たくさんの悲しみを見つめて
知っているんだね 人生は追い立てられることばかりだと
でも そんな顔をしてちゃいけないよ
Melody Fair, won’t you comb your hair?
You can be beautiful too
Melody Fair, remember you’re only a woman ③
Melody Fair, remember you’re only a gir
素敵なメロディ、髪をとかしてごらん 綺麗になれるから
素敵なメロディ、忘れないで 君は立派なひとりの女性なんだよ
忘れないで 君という子はこの世にひとりしかいないということを
Who is the girl at the window pane ④
watching the rain falling down?
Melody, life isn’t like the rain
It’s just like a merry go round
窓辺にたたずむ女の子は誰? 雨の落ちるのを見つめて
メロディ、人生は雨みたいに落ちるばかりのものじゃない
メリー=ゴー=ラウンドのように巡るものなんだ
① signは「しるし」「徴候」。ここでは何か悲しい物事の「気配」か。
② lineは顔の「しわ」(=wrinkle)であろうと思われる。
③ ここと次の行のonly以下を直訳すると「ひとりの女性でしかない」とか「ほんの少女だ」となって意味をなさないので、上のようにした。
④ paneは「窓ガラス」とか「窓枠」。a pane of glassで「1枚の窓ガラス」。