(2017年5月29日発行の『神谷塾だより』に掲載したものに加筆しました)
オードリー=ヘプバーン(1929~1993)はイギリスの女優。1953年の映画『ローマの休日』の王女役に抜擢されて一躍世界の大女優に昇り詰めたことはあまりにも有名だ。「ムーン=リバー」は1961年の映画『ティファニーで朝食を』の挿入歌で、オードリー演じる主人公ホリーがアパートの窓辺でギターを爪弾きながら歌うもの。作詞ジョニー=マーサー、作曲ヘンリー=マンシーニ。Moon Riverは作詞家の故郷であるアメリカ南部にある実在の川らしい。
Moon River, wider than a mile
I’m crossing you in style some day ①
Oh, dream maker, you heart breaker
Wherever you’re going, I’m going your way
ムーンリバー はるかに広がる川 /いつの日か貴方を渡ってみせる
ああ 貴方は夢をくれるけど 夢を壊すのも貴方
貴方がどこへ行こうと 私はついて行く
Two drifters, off to see the world
There’s such a lot of world to see
We’re after the same rainbow’s end ②, waiting round the bend ③
My Huckleberry Friend, Moon River, and me④
二人の流れ者 世界を探しに旅立つ /見たいものが沢山あるから
私たちは同じ虹の足を追い求める /落ち着かない気分で待ちながら
私の懐かしい友達、ムーン=リバーと私
① youはMoon Riverを指す。現在進行形はここでは未来を表す。in styleは「立派に、颯爽と」。
② afterは「…を追い求めて」。rainbow’s end は虹が大地に届くように見える場所。「求めても得られない夢」のたとえとしてThere is a pot of gold at the end of the rainbow. 「虹の端には金の壺がある」という表現がある。
③ bendは「曲げる[曲がる]こと」、round the bendで「頭が変な、逆上した」 だがどうにも意味不明である。すぐ前のendとこのbendで韻を踏むため だけにこの語を置いているとしか思えないのだが…
④ huckleberry(ハックルベリー)は北米産の果樹(とその果実)。作詞家によるとhuckleberry friendは「故郷の懐かしい幼馴染」を意味するらしい。
何を言っているのかわからないところの多い詞だが、「故郷の川」や「懐かしい幼馴染」を思う美しい歌として愛されている曲である。なお、作曲のマンシーニはテレビドラマ『刑事コロンボ』や映画『ひまわり』『ピンク=パンサー』などの主題曲でも知られている。
洋楽のすすめ(15) AUDREY HEPBURN:MOON RIVER