(2016年10月24日発行の『神谷塾だより』に掲載したものに加筆しました)
今回の曲はジャズのスタンダード=ナンバーだ。1931年にハーマン=フップフェルドという人があるミュージカルのために書いた曲で、1942年の映画『カサブランカ』の主題曲としてよく知られている。多くの人が歌っているが、小野リサのものがお勧め。小野は1962年ブラジル生まれで、日本人のボサノヴァ歌手の第一人者。
as time goes byは一般には「時が経つにつれて」と訳されるが、ここでは「時が経っても」である。the fundamental things=恋の「基本的なこと」=人を好きになったり夢中になったりという根本的な部分はいつの時代も変わらない。世間のドタバタに振り回されずに、恋の根本のところを大切にしなさい--ということを歌っている。
This day and age we’re living in 私たちが生きているこの時代は
Gives cause for apprehension いろいろ心配の種が尽きない
With speed and new inventions and things like fourth dimension
スピードの追求とか新発明とか 四つめの次元みたいなことで
Yet we get a trifle weary with Mister Einstein’s theory
それにアインシュタインさんの理論なんかにも 少し疲れちゃったわね
So we must get down to earth だから地に足をつけていなくては
At times relax, relieve the tension ① 時にはくつろぎ不安を和らげて
No matter what the progress or what may yet be proved ②
どんなに社会が進歩しようと どんな新発見があろうと
The simple facts of life are such ③ 人生は簡単な事実の積み重ね
They cannot be removed それが否定されることはない (※)
You must remember this これだけは憶えておいてね
A kiss is still a kiss キスといえばキスをすることだし
A sigh is just a sigh 溜息も溜息でしかない
The fundamental things apply ④ 恋の基本的なことは変わることはない
As time goes by どんなに時が経っても
And when two lovers woo 恋するふたりが求め合うとき
They still say, “I love you” 昔も今も「愛してる」と言う
On that you can rely ⑤ それは確かなこと
No matter what the future brings ⑥ どんな未来が待っていようとも
As time goes by どんなに時が経っても
Moonlight and love songs never out of date
月の光とラヴソングは決して色褪せない
Hearts full of passion, jealousy and hate
恋人たちの心は情熱や嫉妬、憎しみに満ちていて
Woman needs man… 女には男が必要だし
And man must have his mate 男にも連れ合いが必要
That no one can deny ⑦ 誰もそれを否定できない
It’s still the same old story 恋は昔から変わることのない物語
A fight for love and glory 愛と幸せをつかむために争ったり
A case of do or die 生きるか死ぬかの瀬戸際に立ったり
The world will always welcome lovers そんな恋人たちを世界はいつも優しく受け入れる
As time goes by どんなに時が経っても
① at times=sometimes
② 意訳。
③ 意訳。
④ 直訳は「基本的なことはいつも当てはまる」
⑤ You can rely on thatの語順を変えたもの。 rely onは「…を信頼する」
⑥ no matter what~で「何が[を]~しても」。直訳は「未来が何をもたらそうとも」
⑦ No one can deny thatの語順を変えたもの。
なお、最初の部分(※まで)はヴァースverseといって、歌のメイン部分への導入である。アインシュタインの名が出てくるなど、曲が書かれた当時の気分が感じられてなかなか興味深い。
洋楽のすすめ(10) 小野リサ:AS TIME GOES BY