(2016年2月16日発行の『神谷塾だより』に掲載したものです)
皆さんはコブクロの二人を知っているでしょう。作詞作曲・ギター・ヴォーカル担当の小柄な小渕さんと、ヴォーカル専門の長身の黒田さん。こういうスタイルのデュオは数多あると思いますが、その元祖と呼べそうなのがサイモン&ガーファンクル(以下S&G)です。
作詞作曲・ギター・ヴォーカル担当の小柄なポール=サイモンと、ヴォーカル専門の長身のアート=ガーファンクル。二人とも1941年生まれのアメリカ人で今も健在。小学6年生からの付き合いだそうで、高校時代からデュオを組み、1964年にS&Gとしてデビュー。数々のヒットを飛ばした後、1970年にこの曲(邦題「明日に架ける橋」)と同タイトルのアルバムでグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞します。
この曲のヴォーカルは主にアートで3番が二人のハモり。前奏から2番まではラリー=ネクテルという人の美しいピアノだけをバックに進みます。
When you’re weary, feeling small 疲れ果てて 惨めな気持ち
When tears are in your eyes 目には涙がにじむ そんな時は
I will dry them all 僕が涙を乾かしてあげよう
I’m on your side 僕は君の味方だよ
Oh, when times get rough 辛い時がやってきて
And friends just can’t be found 友達も見つからなければ
Like a bridge over troubled water 荒ぶる流れに架ける橋のように
I will lay me down 僕はこの身を横たえよう
When you’re down and out 打ちひしがれて
When you’re on the street 街をさまよう君
When evening falls so hard 宵闇が容赦なく迫る そんな時は
I will comfort you 僕が慰めてあげよう
I’ll take your part 君の役目を引き受けるよ
Oh, when darkness comes 暗闇がやってきて
And pain is all around 苦痛に包み込まれたら
Like a bridge over troubled water 荒ぶる流れに架ける橋のように
I will lay me down 僕はこの身を横たえよう
Sail on, silver girl 帆を揚げよう 銀色の乙女よ
Sail on by 進むんだ
Your time has come to shine 輝く時が来たんだよ
All your dreams are on their way 夢はもう すぐそこにある
See how they shine ほら 眩しく輝いているだろう
Oh, if you need a friend もしもひとりで心細ければ
I’m sailing right behind 僕がすぐ後ろを付いていくよ
Like a bridge over troubled water 荒ぶる流れに架ける橋のように
I will ease your mind 君の心を楽にしてあげよう
2番までは男どうしの友情を歌っているように思えるのだが、3番で相手は「銀色の乙女」であったことになる。1番・2番もそうだとすると、打ちひしがれていた彼女は一気に輝く時を迎え、夢も実現間近である。2番の後の間奏(※1)で楽器が増えてドラマチックになるので、聴いている分には3番との“断裂”はあまり気にならないが、こうして歌詞だけ見ていると唐突な感じは否めない。
もともとポールは2番まで書いてやめるつもりだったという。アートとプロデューサーの要請で3番を加えたものの、それが最後まで気に入らなかったという。またアートは、この曲はポールが歌うべきだと思っていたそうだ。アルバム制作時にアートが俳優業で忙しく、二人はすれ違いぎみ。次第に音楽性の相違が露わになり対立するようになったらしい。そんなわけで、このアルバムで大きな賞を取ったあと、S&Gはデュオとしての活動を停止してしまうのである。ときどき再結成してライブもやっている(※2)が、残念なことである。
lay[発音lei]は他動詞「横たえる」で、これと対になる自動詞「横たわる」はlie[発音lai]。綴りと発音が紛らわしいので、しっかり憶えよう。活用は、前者がlay-laid-laid、後者がlie-lay-lainとなっていてこれもまた紛らわしい。
※1 2番後の間奏の4小節目2拍目に「ダーン」と一発入るドラムがとてもいい。この曲を聴いていてここに来るたびにゾクゾクするほど。
※2 再結成時には、この曲は二人で交互に歌うようにしているらしい。2009年に札幌に来たときは2番をポールが歌っていた。
洋楽のすすめ(4) SIMON & GARFUNKEL:BRIDGE OVER TROUBLED WATER