(2015年10月13日発行の『神谷塾だより』に掲載したものです)
英語、得意ですか。または、好きですか。
得意だとか、少なくとも苦手ではないと自分で思える人は、きっと好きでもあるだろう。逆に、好きでないとか嫌いだったりすると(英語に限ったことではないが)なかなか上達しないものだ。
さて、いま英語で苦労していて、もっとデキルようになれればと、漠然と思っている君。英語をやっていて面白いと思った経験があまりないのではないですか。もしも教科書と辞書と問題集でしか英語との付き合いがないのだったら、それは確かに面白くも何ともないね。英語の勉強はもっと広がりがあっていい。それに、英語が苦手のままだと受験でも就職でもその後も、何かと不自由だ。
だから他の材料も使い、まずはなんとか好きになってもらいたい。それで、洋楽だ。洋楽を楽しむことによって、英語をぐっと自分に引き寄せられないだろうか。(ここでいう洋楽とは欧米のポップスのこと。ロックやジャズも含め、さしあたり英語で歌われる歌全般を指す)
何かのきっかけで心の琴線に触れる曲があったとしよう。それを気に入ったら繰り返し聴いてほしい。はじめは何を言っているのかわからないかも知れないが、歌詞がわからなくてもイイなと思わせてくれる曲がいくらでもある。その曲の入ったCDを探して、歌詞を見ながら聴き、一緒に口ずさんでみよう。輸入盤でなければたいてい日本語訳がついているから、それも読んでみよう。
そして、なぜそのような日本語がつくのかを知りたくなったら、もうその曲をモノにするまであと少しだ。知らない文法もあるだろうし、なにせ歌詞だから文法に従わない箇所もあるし、学校で習わないgonnaとかain’tとか ‘causeとかsingin’ とかいった単語や表記が出てくるが、辞書で調べたり大人に訊いたりしながら解読してみよう。
憶えたらカラオケで歌ってみる。映像の歌詞が間違っていたり、ルビ(カタカナ)が間違っていたりもするから、歌詞やルビに頼らず、つまりソラで歌えるようにする。まず1曲。格好がついたら次の1曲。そうするうちに英語の力がつき、レパートリーも増えて一石二鳥だ。CDに合わせて歌っているうちに発音もそれらしくなっていくだろう。将来は同じ方法でフランス語などにも挑戦するといい。
…ということで、この『神谷塾だより』の紙面が空いているときに時々、1曲ずつ紹介してみようと思ったわけである。
歌を好きでもない人にはすまないが、神谷が自信をもってお勧めできる材料は洋楽なのだ。ただし、世代間ギャップというやつで、君たちがどんな洋楽を好きなのか、あるいは聴いているのかいないのか、わからない。だからこちらで勝手に決める。
いろいろ考えた結果、第1回はカーペンターズにした。
リチャード(作曲・編曲・ピアノ・コーラス)とカレン(ヴォーカル)の兄妹デュオ。リチャードは68歳で健在だがカレンは1983年に32歳で亡くなっている。歌詞は平易なものが多く、カレンの歌声は美しく、とても聴き取りやすい。
今回紹介したいのは1970年のClose to you(邦題はなぜか「遙かなる影」)。歌詞すべてを載せるスペースはないので前半だけ--
Why do birds suddenly appear every time you are near
Just like me they long to be close to you
なぜかしら あなたが近くにいるといつも 小鳥たちが急に姿を見せる
きっと私と同じね 小鳥たちも あなたのそばにいたいのね
Why do stars fall down from the sky every time you walk by
Just like me they long to be close to you
なぜかしら あなたが通りかかるといつも 星たちが空から降りてくる
きっと私と同じね 星たちも あなたのそばにいたいのね
On the day that you were born
The angels got together and decided to create a dream come true
So they sprinkled moon dust in your hair
and golden starlight in your eyes of blue
あなたが生まれた日に 天使たちが集まって夢を叶えようと決めた
それであなたの髪に月のかけらを散りばめ
その青い瞳の中に星のきらめきを入れた
That is why all the girls in town follow you all around
Just like me they long to be close to you
だから 町中の女の子が あなたの後を追い回す
きっと私と同じね 彼女たちも あなたのそばにいたいのね
こうして書いてみるとかなり小っ恥ずかしい内容ながら、アメリカの音楽業界誌『ビルボード』で4週連続1位を記録したというカーペンターズの代表曲のひとつだ。カーペンターズには他にもお勧めの曲がたくさんあるのだが、まずは平易なものをと思い、これにした。
closeは形容詞でクロウスと発音する。「…のすぐそばにいて」という意味。longは動詞。long to~で「~したいと熱望する」。
画像はベスト版。ダウンロードではなくCDで、ぜひ他の曲も聴いてみてほしい。
洋楽のすすめ(1) CARPENTERS: (THEY LONG TO BE)CLOSE TO YOU