川端潤『ビギナーズ有機化学』をいちおう読了したので、次の教科書を探すことにしました。今度は有機化学の独習にいよいよ本腰を入れるつもりなので、時間をかけて検討する価値があると思い、書店に出かけたり、amazonの書評を見たり、2ちゃんねるのスレッドを見たりもしました。そうしてだんだんわかってきたのは、以下のようなことです。
①アメリカ?の研究者の著作の翻訳ものが多く、それらは『マクマリー有機化学』のように著者名が書名の一部になっている。“国産”の教科書もあるが、定評のある本は翻訳ものに多い。
②ビギナー向けの次の段階には、『マクマリー有機化学概説』のように1冊にまとめられた「概説」または「概論」のグループがある。化学専攻でない理系学部レベルというところでしょうか。
③その上に化学専攻の学部生向けとして『マクマリー有機化学 上・中・下』といった、いわゆる定番の教科書がある。たぶんすべてが2分冊から3分冊でハードカバー。演習問題の解答はついていないか、あっても英語版の別冊になっている。ボリュームがあり、ワンセットを定価で買うと1万円をあっさり超えてしまう。
④さらに大学院生向けとして『ウォーレン有機化学 上・下』などがある。
--定評のある本が2~3分冊になっていて演習問題の解答も別冊、別冊が英語版ででも存在するかウェブサイトに公開されていればいいほうで、解答が手に入らないものも珍しくないのです。この辺が物理や数学の本と大きく違うところ。大学の授業で指定するものなら解答も用意されるかも知れませんが、こちとら独習者でありますので、解答がなくては無理です。
そんなわけで、最適の1冊(1種類)を探すのにけっこうな時間をかけることになりました。高価なものでもあり、また今回買ったらたぶん死ぬまでもう別の本は買わない。浮気しないでその本を何度も読む。そういうつもりで、多少背伸び気味でもいいから欲しいものを買おうと思いました。現在の実力に鑑みると②の概説・概論へ進むべきだったかも知れませんが、それを一通り読むのにたぶん1年では済まないうえに、苦労する割に満足が行かないかも知れない。人生の残り時間を考えるとそれではいけません。
というわけで、冒頭の写真の『マクマリー有機化学 第6版 上・中・下』(東京化学同人、2005)を購入しました。現在は第7版が出ていますが、最新版でなくても私には十分、といいますか私は車でも何でも中古が好きであります(笑)。北大十三条門そばの「弘南堂」さんにこの本がありましたので、本を売りに行ったその“売上げ”で買いました。定価で買うと3冊で13300円になるところ、4000円で買えました。いい買い物です。
1章も満足に読めなかったらどうしよう…という不安がないでもなかったのですが、例によってスターバックスに出かけて取りかかったところ、まず第1章は読めました(笑)。いま第2章の途中にいます。要所には例題と解法があり、次の練習問題には下巻の最後に略解があります。当座はこれで十分に充実した勉強ができそうであり、章末問題の別冊解答は追って入手するつもりです。
さて、早くも上がった成果を1つ。これまでニトロ基(-NO2)や硝酸イオン(NO3 2-)の電子の状態が私はわからなくて(窒素原子Nは結合の腕がふつう3本なのに、これらでは4本です)非常に気持ち悪かったのですが、マクマリーの第2章を読むうちに理解できました。孤立電子対を豊富にもつ酸素原子Oが“融通”するのですね。
読んでいて消化不良感がなく、それまでの疑問も解決される。ということで、たぶん相性の良い本を選ぶことができたのだと思います。
有機化学の教科書